土佐の伝統釣法 ハイカラ釣りについて紹介します。

伝統的なハイカラ釣りと近代的なハイカラ釣り


昔ながらのハイカラ釣りは、木造和船で櫓(ろ)を漕ぎながら竹のギリ竿で糸を手繰りながら釣るスタイルで、糸を直接手に持つことでリールを使うよりも魚の当たりを敏感に感じることが出来ます。

この方法はより繊細なアタリまで拾うことができるメリットと、糸を手繰らないといけなので魚の強烈な引きで手のひらを糸で切ってしまうというデメリットがあります。
手繰りあげた糸を上手に扱わないと船の上でもつれてしまって手返しが悪くなってしまいます。
まさに熟練の技が必要となる釣りです。

宇佐でも昔はこのギリ竿を用いた櫓漕ぎでの釣り方が主流でした。
竹村貸舟店の舟も昔は全て木造和船の小型伝馬船で櫓を漕ぎながらハイカラ釣りをする人が多くいましたが、リールの軽量化、ドラグの高性能化、しなやかで強度のある竿や4ストロークエンジンの登場などにより、現在ではハイカラ仕掛けを用いての一般的な竿リール、FRP和船とエンジンを使った釣り方が主流となっています。
 
潮流が速い場所や風の強い場所では櫓よりエンジンの方が操作が容易で、手で糸を手繰るよりリールの方が糸がらみのリスクが少ないため、より手返し良く魚を釣る方法として進化して今の方式となっています。



ハイカラ仕掛け


ハイカラ仕掛けとは、針とおもりが一体になったシンプルな仕掛けです。


針のサイズ、おもりの重さは幅広く取り揃えています。


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軽いものは水深の浅い湾内で、重いものは沖で使用します。


同じ重さでも、エビの大きさ、ターゲットの魚によって針を使い分けます。


軽いものは細めの針から平打ちテンヤ針の小サイズまで。
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沖用のものは平打ちテンヤ針の小、中、大の3種類。
おもりは5号、6号、7号、8号とあります。
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原理は最近流行の一つテンヤやカブラの高知バージョンという感じですね。

価格は鉛の大きさによって異なりますが、仕掛けの値段は一つテンヤと比べると激安で、テンヤ仕掛け一個でハイカラ仕掛けが4個~10個ほど買えてしまいます。

底を取りながらの釣りでは根掛かりによる仕掛けのロストはよくあることですので、予備の仕掛けの携帯は必須です。

コストパフォーマンスは最高です。




ダイワ 紅牙遊動テンヤ+SS 8号 ピンク/チャート夜光












釣果は同じ船に乗っている人で、ハイカラ仕掛けとテンヤ仕掛けでやって、ハイカラ仕掛けの方が良く釣れるということもよくあります。

もちろん個人差やその時の潮の条件、ターゲット等の違いによる差もあります。




ハイカラ仕掛けと糸の結び方


ハイカラ仕掛けと糸の結び方の動画をご覧ください。

土佐の伝統釣法「ハイカラ釣り」ハイカラ仕掛けのくくり方動画くくり方はこれ以外にもありますが、竹村貸舟店オススメのくくくり方は輪っかを6回通す方式です。

Posted by 竹村貸舟店 on 2015年7月16日


糸は見やすいよう黄色い糸を使いましたが、実際は黄色である必要はありません。


画像でもう一度説明しましょう。

まず、針が上向くように持ち、穴の上から下向けに糸を通します。

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糸の先端の方に輪を作ります。
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作った輪を針に通して、
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糸の先端をキュッと引っ張ると締まります。

最初に作った輪の交差が逆向きだと締まらないので注意しましょう。
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これを6回繰り返して結ぶと完成です。



ハイカラ仕掛けは針とおもりが一体となった仕掛けです。

魚の当たりをダイレクトに感じることができ、合わせまでのタイムラグが少なく、アタリが出てから即座にかけるというのが基本の動作となります。




餌の付け方


針に刺すのは餌のエビ。
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当店では活きエビを扱っています。
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冷凍エビもありますが、餌の持ちは断然活きエビの方が良いです。

サイズは日によって大小差はありますが、平均的な大きさはこれくらい。
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エビの尻尾を切って、尾の方から針に刺し、最後はエビの腹から針が付き出るように差し込みます。
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エビが真っ直ぐになるように針に差すのがコツです。

これで準備OK。
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これをそのまま海に放り込んで魚に食わせます。

食わせた魚のクチに掛かった針を外すときも針と鉛が一体になっているので、ペンチ要らずで手返しが早いのもこの釣りの利点です。




ハイカラ釣りに適したタックル(竿・リール・糸)


湾内でハイカラ釣りをする場合、糸はフロロカーボンの1.25~1.5号が良いでしょう。

道糸(リーダー)、ハリスと分ける必要はありません。
リールにはフロロの糸を巻きつけて、そのままハイカラ仕掛けに直接結んでください。


スタッフH、スタッフNが湾内でのハイカラ釣りに愛用しているリールはこちら。

軽めの竿には軽いリールの方がバランスが良いのでこれを使っています。





もうこのシリーズはもう廃版になってしまっているので、代わりにスタッフTomoが愛用しているのはコチラ。










もちろん、スピニングの高級品を使っている人もいます。









お手頃なものではこちら。

ちょっと重めですが、安価な割に十分ドラグの調整が効きます。


糸はフロロカーボンの1.5号をオススメします。




繊細なアタリも拾いたい場合は、強度は落ちますが1.25号でも良いでしょう。
ただし、ヒョウゴの引きは強烈なので、ヒョウゴ狙いの場合は絶対1.5号の糸を使用した方が良いです。




沖でハイカラ釣りをする場合は、道糸はPEの0.6~0.8号、ハリスはフロロの3号から3.5号を使用します。


沖で釣る場合は重めのハイカラを使用するので一般的なテンヤ竿でもハイカラ釣りができます。


湾内で軽いおもりを使用する場合は、竿はテンヤ竿より先が柔らかいものがアタリが取りやすくておススメです。

先調子で7:3~8:2くらいが良いでしょう。

当店スタッフはちょうど良い市販の竿がなかったので、市販の竿に手を加えてオリジナルのセッティングにしています。



ハイカラ仕掛けの収納ボックス


鉛や針の大きさがパッと見分けるのが難しい場合は、仕切りのついた箱にサイズ別に仕分けると良いでしょう。

当店スタッフが良く使っているのはこんな感じのクリアケースです。



こんな感じに収納します。

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空きスペースがあれば結んだ糸を切るために小型のカッターを入れておくと便利。
ダイソーなんかに行くと売っています。


スポンジに切れ目を入れてそこに針側を差し込み綺麗に並べて収納している人もいます。








スポンジ全体に潮をかぶって濡れてしまうと針がサビてしまうので、すぐに水洗いして乾燥させておきましょう。




ハイカラ釣りは流し釣り


ハイカラ釣りは船を流しながらの釣りです。


魚の当たりが取りやすいよう底がギリギリわかる程度の軽いおもりを使用するので、仕掛けは潮の流れに合わせて流れます。

なので糸を張った状態を保持するために仕掛けに合わせて船も一緒に流しながら魚の当たりを待ちます。


糸が張っていないと魚の当たりは分かりませんし、船が固定されていると仕掛けだけが潮流を受けて浮かび上がってしまい底が取れていない状態となってしまいます。

船を固定して重めのおもりを使用すると魚の繊細なアタリまでは拾うことができずエサだけ取られて釣り上げる機会を大きく喪失してしまいます。


こうした理由から、軽いおもりで流しながら釣るハイカラ釣りのスタイルが確立してきました。



流し釣りで重要なのは潮と風


ハイカラ仕掛けが底について糸がたるまない状態をキープするためには潮の流れと風の流れを読まなければなりません。

無風状態で底と上の潮の流れが全く同じ状態であれば適切な重さのハイカラ仕掛けを付けているとドテラ流しでも糸がピンと立ったまま底を取った状態をキープできます。


ここに風が加わると、水面に浮いている舟は風下に流されるため、無風状態のときのようにドテラ流しをしていると仕掛けと船の位置が分からなくなり、底を見失ってしまいます。

風上に向かい舟を動かすことで風に流された分を補正をしなければいけません。


ただ真っ直ぐ風上方向に進むと潮で流された分が無視されてしまいますので、潮で流された分と風で流された分を考慮して船を動かさないと底が分からなくなってしまいます。


櫓漕ぎ舟では船首を風上に向け、櫓で船を推し進めながら船の位置を調整しますが、エンジンでの調整は櫓漕ぎ舟とは船の向きは正反対で、船尾を風上に向けギアをバックに入れスロー(低速)で船を後ろ向けに引っ張ります。

エンジンは常にかかっている状態を保ちながら、風や潮の状況に応じてギアをニュートラルとバックの交互に入れ替えながら船の位置を調整します。


海底地形が複雑な場所では潮の流れが蛇行したり反転流が発生し渦が巻いたりと、表層の流れも複雑になり船が一方向でなくあちこちに流されてしまうこともあります。

そうなると櫓での操作は困難となりエンジンで細かく仕掛けの流れる方向を追いながら方向転換を迫られます。




海底地形の理解と山立てが重要

海底には起伏があり、常に同じ深さではありません。
底を取りながらの流し釣りでは海底地形を把握しておく必要があります。

場所が変われば水深も変わり、出している糸の長さを調整しなければなりません。
重めのおもりに水の抵抗を受けにくい細い糸を垂らして、水深を調査することで海底の起伏を調べることが可能です。


なにより重要なのが釣れるポイントの記憶・記録です。

魚は起伏のある地形に群れで固まることが多いのですが潮の流れが変わると移動します。

広範囲でアタリが出ているときは大雑把に移動しても釣れますが、ごく狭い範囲でしかアタリが出ていないときはピンポイントにその上を通らないと魚の当たりが出ません。



海の上は道路のように線もありませんし、目印をつけることもできません。
イカリを打ったブイを浮かべても潮の流れや風向きで海面のブイの位置も変わります。
まして流し釣りをしている場所に目印のためにブイを投げ入れるなど言語道断です。

海の上で自分の場所を把握し、ピンポイントで釣り場に移動するために生み出された技術が「山立て」です。

山の山頂、谷、一本だけ高く生えている木などを目印に、手前と奥の山の目印が重なりあうと一つめの方向を決めることが出来ます。


しかし、一方向だけでは遠近の位置決めが出来ません。

海の上で自分の場所を正確に把握するためには最低二方向での山立てが必要です。

二つの目印が重なる直線を結んだ位置で自分の場所を確定することが出来ます。

二つの線はできるだけ直角に近い方がより正確な位置を出すことができます。


人工物の少なかった昔は山だけを見て位置を導き出していましたが、現在は建物、橋、道路標識などの人工物もたくさん存在するため、自分なりに分かりやすいものを目印にすると良いでしょう。

魚の当たりが出た場所から遠くに見える地形や建物の重なる位置を記憶し、一つのポイントにつき三方向で山立てができれば自在に魚を追うことができるようになるでしょう。


ここまでに書いた水深調査方法および山立てではそれぞれの場所を熟知するにはかなりの経験が必要となるが故に釣り人はそれぞれ「自分の釣り場」を持っていました。

最近ではGPS付き魚探の登場で、そういった技術がなくとも簡単に水深と位置が分かるので、初めての場所でも数回流せば水深も把握することができますし、ピンポイントで釣れた場所に戻ることも可能となりました。

魚の反応が出る出ないも重要ですが、初心者にとっての魚探の価値はそれ以上に水深と正確な位置把握という部分にあります。




お財布に余裕があればGPSと魚探と同時に表示できるタイプがおススメです。
 
あとは画面の大きさや表示機能、振動子の性能などの差でどんどん値段が上がっていきます。












流し釣りの注意点


魚は航路など深く掘った場所に群れを成す習性があります。
 
しかし、航路は船の往来があるため、港則法で投錨(イカリを打って舟を固定する)ことは禁止されています。
 
また、出入りする船の進路妨害も禁止されています。

大型船は小型船のように自由な移動が出来ません。
湾内の航路を使用しないと浅瀬に乗り上げてしまいます。

入ってくる船が見えたら、釣りをしている舟は通過する船が通ることができるよう道をあけるよう移動して下さい。
錨(イカリ)を打ち込んで船を固定してエンジンを切って釣りをしていると急な対応に間に合いません。

先日も航路の中にイカリを打って釣りをしている船があり、エンジントラブルでそのまま流れてきた舟とぶつかるシーンがありました。
 

大きな船の通過後に発生する引き波を小舟が真横から受けると転覆する可能性もあります。
わざと小舟のすぐ横を通過する大きな船もいます。
大変危険です。
自ら危険を避ける行動を取るよう注意してください。
 
大きな船の引き波は船の真横や船尾ではなく、船を移動させて出来るだけ船首から受けるようにしてください。

釣りをしている船の近くを通るときにはフルスピードではなく、速度を緩め引き波が大きくならないよう注意しましょう。

流し釣りのポイントは狭い範囲に舟が固まるため、船長は周りの船との位置関係に注意を払う必要があります。



マナー、特に法律を守れないようであればその場所では釣りが禁止となる場合もあります。
 

釣り人はマナー・法律を守ってこれからも安全に釣りが楽しめるよう心掛けましょう。







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